この事例の依頼主
年齢・性別 非公開
相談前の状況
私の母は、私に全ての財産を相続させるという遺言を書いてくれました。その後、母が無くなってみると、全ての遺言書を取り消すという公正証書遺言を作成していました。母は認知症で、成年後見人が付いていたので公正証書は無効ではないでしょうかという相談がありました。
解決への流れ
認知症で成年後見人が付いていても医師2人がお母さんに判断能力があるという診断書を書いてくれれば判断能力があるとして遺言書を作成することは可能となります。したがって、医師2人の判断能力があるという診断書があると、遺言書を無効だと争うのはかなり厳しいですが、当時の遺言者(被後見人)の状況を看護記録などから医師の判断や判断方法が正しかったか調査して争ってみましょうと説明し、遺言無効確認の調停及び訴訟の依頼を受任しました。遺言者(被後見人)の看護記録や介護記録や診断書を取り寄せ、遺言書を書いた直後の看護記録に、遺言書と明らかに矛盾するおかしなことを言っている記述があることを発見しました。そこで、訴訟では、その点を中心に、遺言作成時に、遺言者(被後見人)の判断能力(遺言能力)がないことから、遺言を取り消す遺言は無効だと主張しました。裁判官もその記述から遺言が有効だという判断を下すことはできませんでした。遺言を取り消す遺言が無効だとすると、相手には遺留分があるので、各相続分は、依頼者が4分の3、相手方が4分の1となります。遺言を取り消す遺言が有効だとすると、依頼者に有利な遺言がなくなるので、各相続分は依頼者2分の1、相手方2分の1となります。裁判では和解で、相続分は依頼者が4分の2と4分の3の間の8分の5、相手方は8分の3となりました。遺産は数億円だったことから、この和解で依頼者は何千万円もの利益を得ることができました。
医師2人の診断書があったことから、裁判官にその診断書が誤っているということを認めさせないと遺言は無効にならないので厳しい事案でした。しかし、施設から介護記録を取り寄せ、介護記録の記載から、裁判官に医師2人の診断書があっても遺言は無効かもしれないと思わせることができて有利な和解ができて良かったと思います。