この事例の依頼主
50代 女性
相談前の状況
ご主人の経営する会社の経営不振により、ご主人・会社が破産することとなり、住宅ローンの連帯保証人であった奥様も破産がやむなくなった事案です。問題は、奥様には預貯金のほか、200万円弱の解約返戻金がある生命保険という財産があったことです。
解決への流れ
ご主人・会社とともに破産申立しましたが、奥様については預貯金、生命保険の全てについて自由財産拡張申立をしました。申立にあたって、依頼者にはガンの切除術を受けた病歴があり、保険を維持する必要があること、家庭の事情から就労は困難であること、などの事情を上申しました。その後、破産管財人の求めに応じて上記事情の疎明資料を多数提出したほか、保険契約が過大でないかとの意見に反論するため、ガンの治療費に関する資料を提出したり、万一依頼者が入院することとなれば、家庭の事情により夫の就労も困難となって生活費に困窮する事態が予想されることなどを追加で上申するなどして、破産管財人の説得に努めました。その結果、破産管財人は当初は難色を示されていましたが、最終的に、拡張申立財産の全てについて拡張することの同意を得ることができました。
破産する人の全てが無一文というわけではありません。この依頼者のようにわずかであれ財産がありながら、破産を余儀なくされる人がいます。しかし、その財産を失うのが嫌だからといって、隠したり、これまでの借金の返済と称して近しい人に与えたりすれば、破産管財人の否認権行使を招き、破産手続が速やかに終わらないばかりか、周りの人に迷惑を掛け、さらには免責不許可となる危険まで生じてしまいます。破産申立の依頼を受けた場合に、財産を隠匿したり、失念したりしていないか、よく問い質すこと、そして財産があるなら「90万円を超えているから」と直ちに断念するのではなく、拡張が認められる事情がないかよく検討することの重要性を改めて感じた事案でした。