2842.jpg
強制的に「不妊手術」させられたーー60代女性が訴える「旧優生保護法」の問題とは?
2015年07月24日 12時09分

10代のときに「旧優生保護法」に基づいて、強制的に不妊手術を受けさせられたとして、宮城県の女性(69)が6月下旬、日本弁護士連合会に人権救済を申し立てた。

報道によると、女性は知的障害があったが、16歳のころ、住み込みで家事手伝いをしていた。その当時(1963年)、職親(知的障害者の生活・職業指導を引き受ける人)によって、何も知らされないまま県の診療所に連れて行かれた。そこでは、卵管をしばって妊娠できなくする手術を受けさせられたのだという。

手術の根拠となったのが、旧優生保護法だったという。女性は、国が定めた法律によって「自己決定権、幸福追求権が侵害された」として、補償を含む適切な処置を国に勧告するよう、日弁連に求めている。今回の人権救済の申立の背景について、女性の代理人をつとめる新里宏二弁護士に聞いた。

10代のときに「旧優生保護法」に基づいて、強制的に不妊手術を受けさせられたとして、宮城県の女性(69)が6月下旬、日本弁護士連合会に人権救済を申し立てた。

報道によると、女性は知的障害があったが、16歳のころ、住み込みで家事手伝いをしていた。その当時(1963年)、職親(知的障害者の生活・職業指導を引き受ける人)によって、何も知らされないまま県の診療所に連れて行かれた。そこでは、卵管をしばって妊娠できなくする手術を受けさせられたのだという。

手術の根拠となったのが、旧優生保護法だったという。女性は、国が定めた法律によって「自己決定権、幸福追求権が侵害された」として、補償を含む適切な処置を国に勧告するよう、日弁連に求めている。今回の人権救済の申立の背景について、女性の代理人をつとめる新里宏二弁護士に聞いた。

●手術数は1万6500件にも及ぶ?

そもそも「旧優生保護法」は、どんな法律なのだろうか。

「旧優生保護法は、1948年に制定された法律です。その目的として『優生上の見地から不良な子孫の出生を防止する』(同法第1条)と定められていました。

そのために、知的障害などの精神障害を理由として、本人の同意なく、医師の申請と都道府県優生保護審査会の審査に基づく優生手術が長年にわたって、おこなわれてきました。その手術数は、約1万6500件にも及ぶといわれています。

まさに、『不良な子孫』という文言で人間を差別化して、子供を生み育てるという、人として基本的な権利を失わせることを合法化していたのです」

●いまも被害が放置されている

今回人権救済を求めた女性は、どのようなことを求めているのか。

「この女性は、本人が16歳のときに、知的障害を理由として、優生手術と知らされないまま、手術されたのでした。

その後、何度か結婚しても、子どもができないという理由から、破綻してしまいました。本人は、理不尽な手術を知らされないままに受けさせられたことについて、国に謝罪と補償を求めています」

今後の人権救済の展開は、どのようなものになるのだろうか。

「女性本人の希望に沿って、国への勧告がなされることを期待しています。

先日は院内学習会も開催されました。国会議員にも、この問題に強い関心と怒りを持っていただきました。

戦後の日本で、本来あってはならないことが起こり、いまも被害が放置されています。同様な制度を持っていたドイツとスウェーデンでは、すでに補償がなされています。国会でも真摯(しんし)な議論がおこなわれ、被害救済の制度ができることを期待しています」

新里弁護士はこのように訴えていた。

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る