7442.jpg
都議「東京五輪マラソンの札幌変更はIOCファースト」、選手や都民へのダメージ懸念
2019年10月29日 14時39分

東京五輪のマラソンと競歩の開催地をめぐり、激しい攻防が続いている。東京都議会の最大会派である都民ファーストの会は10月29日、日本外国特派員協会(FCCJ)で会見、札幌への変更を決定した国際オリンピック委員会(IOC)に対して、「アスリートファーストではなく、IOCファーストだ」と強く批判した。

都民ファーストでは、もし札幌で開催した場合の新たなコストを340億円と試算しているが、これ以外にも、これまでかけたコースの遮熱性舗装費用300億円や、東京で9月に開催されたテストイベント費用数十億円などのコストが無駄となり、都民や都に与えるダメージが大きいとした。

また、都議らはIOCが札幌変更の理由を東京の暑さとしたことに、「2024年五輪が開かれるパリの今夏の気温は40度だった」と指摘。「東京や札幌の問題だけでなく、もう五輪を開催できる都市がなくなる。五輪の持続可能性に関わる問題」と訴えた。

東京五輪のマラソンと競歩の開催地をめぐり、激しい攻防が続いている。東京都議会の最大会派である都民ファーストの会は10月29日、日本外国特派員協会(FCCJ)で会見、札幌への変更を決定した国際オリンピック委員会(IOC)に対して、「アスリートファーストではなく、IOCファーストだ」と強く批判した。

都民ファーストでは、もし札幌で開催した場合の新たなコストを340億円と試算しているが、これ以外にも、これまでかけたコースの遮熱性舗装費用300億円や、東京で9月に開催されたテストイベント費用数十億円などのコストが無駄となり、都民や都に与えるダメージが大きいとした。

また、都議らはIOCが札幌変更の理由を東京の暑さとしたことに、「2024年五輪が開かれるパリの今夏の気温は40度だった」と指摘。「東京や札幌の問題だけでなく、もう五輪を開催できる都市がなくなる。五輪の持続可能性に関わる問題」と訴えた。

●9月のテストイベントはIOCも「高評価」だったのに…

この日、会見したのは、都民ファーストの山田浩史都議と白戸太朗都議の2人。山田都議は、10月25日にIOCのジョン・コーツ調整委員会委員長が小池都知事との会談でプレゼンテーションした資料を明らかにした。

資料によると、IOCが札幌変更に動いた理由は、中東ドーハで9月、気温30度、湿度70%を超える中で開かれた世界陸上のマラソン競技にある。資料によると、女子マラソンに参加した選手68人のうち、ゴールできたのは40人だけだった。棄権した28人のうち16人は半分も走れなかったという。39人が救護テントに運ばれた。IOCは「これを東京五輪で繰り返してはならない」と説明している。

東京では9月、五輪のテストイベントとして、五輪とほぼ同じコースでマラソングランドチャンピオンシップ(MGC)が開催され、大きな問題は報告されていない。山田都議は一連の流れに、疑念をあらわにした。

「IOCのトーマス・バッハ会長もMGCの運営を高く評価してくれていた。その後、何が起きたかわからないが、突然、10月16日に札幌への変更を検討していると伝えられた。その後、10月25日にはバッハ会長から『決定』だと言われました。IOCの調整委員会は明日(10月30日)から開かれるにも関わらず、こうした手続きは非常に問題だと考えます」

●IOC「早朝スタートだとヘリコプターから撮影できない」

IOCが指摘するのは、暑さの問題だけではない。東京都では暑さ対策の一環として、早朝スタートを提案してきたが、IOCは「アスリートファーストのコンセプトから、沿道に誰もいないコースを走らせることはできない」「夜明け前だとヘリコプターから撮影ができず、映像のクオリティが低くなる」といった理由で、これらも否定している。

都民ファーストでは、午前5時スタートを提案。東京では8月、すでに夜明けであると反論している。都民ファーストの比較によると、ドーハの女子マラソンがスタート時の気温32.7度、ゴール時の気温32.4度だったのと比較し、午前5時案であれば、スタート時の気温は27.1度、午前8時でも気温31.2度程度であり、コンディションは問題ないとした。

都民ファーストによる気温比較

山田都議は、「IOCは、メディアのヘリが飛べないのではないかという懸念をしていますが、午前5時は明るい上、アスリートファーストであるならば、メディアのヘリについて考慮するのはおかしい」と指摘。暑さの問題だけでなく、札幌変更は警備、新たにかかるコストなど、都民や東京都への影響は大きく、「数百億円にもなりえる」と懸念を示した。

●選手「準備不足の場所で走るのが不安」

自身もトライアスロン選手である白戸都議も、「東京での開催が決定してから6年。6回の夏が過ぎています。なぜ今さら変更なのか。これまで準備してきた選手や地元の人たちのことを考えていない。IOCファーストではないのか」と憤りをあらわにした。

白戸都議は、選手や競技関係者にインタビューを実施。「これまで、東京で走るために周到に対策して準備してきたが、(直前に変更になれば)準備不足の場所で走る方が不安がある」「7万人が入る新国立競技場にゴールするのが夢だった。それを奪われるのが悲しい」といった声が寄せられているという。

「マラソンは過酷なスポーツです。準備不足だと気温25度であっても危険です。でも、準備をきちんとしておけば、30度を超えても競技はできます。これは過去の大会でも証明されています」と白戸都議は説明。札幌変更による選手たちへのリスクに懸念を示した。

五輪におけるマラソンは沿道からも地元の人たちが応援できる花形競技であり、開催都市で開かれなかった例はないという。一方で、2024年の五輪開催が決定しているパリでは、今年の夏、40度を超える酷暑を記録した。山田都議と白戸都議は、「五輪の持続可能性に関わる問題」として、あらためて東京でのマラソン開催を訴えた。

10月30日からはIOC調整委員会が都内で開催される。IOCと東京都、大会組織委員会ら当事者がマラソンの開催について、最終的な決着を探るとみられる。

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る